【翻訳】本当に使える PRD (Product Requirements Document) とは?──15年の学びを5分で



著者 Aakash Gupta 氏の許可を得て翻訳しています。

原文:
aakashgupta.medium.com


(目次)

かつて私は、PRD(Product Requirements Document)を「エンジニアに渡すおしゃれなToDoリスト」程度に考えていました。やりたいことを書き出し、チームに渡して、あとは魔法のようにプロダクトが完成するのを待つだけ――。

しかし、それはとんでもない誤解でした。

15年以上にわたってPRDを書き続け、成功したプロダクトもあれば、うまくいかなかったものも多くありました。
その中で私が学んだ、不都合な真実があります。
それは、多くのPRDが失敗するのは、書き方が悪いからではなく、その本質が誤解されているからだということです。

5分だけお付き合いください。


あなたのプロダクトを台無しにする「PRDの神話」

PRD(プロダクト要件ドキュメント)について、最も誤解されていることがあります。
それは、「何を作るかを定義する静的なドキュメント」だという考えです。

――これは完全に違います。


本当に優れたPRDとは、理解の深化とともに進化し続ける、“生きた”戦略ツールです。
仕様書ではなく、意思決定のためのフレームワーク。
引き渡し用の資料ではなく、チームのコラボレーションを促進するプラットフォームなのです。

あるエンジニアリングリーダーはこう言いました:
「最高のPRDは、要件というより“共有された知性”のように感じられる。
単に“何を作るか”だけでなく、“なぜそれが重要なのか”まで理解できたんだ。」

もしあなたのPRDが、Googleドキュメントに書かれたまま一度も更新されていないなら、
あなたのチームはおそらく“間違ったもの”を作ってしまっている
可能性があります。


優れたPRDが必ず辿る6つの進化ステージ

ほとんどのプロダクトチームは、次のような直線的な思考をしています:課題 → 解決策 → 開発 → リリース

しかし、本当に優れたプロダクトは、もっと洗練された進化プロセスを経て生まれます。
ここでは、高価な失敗を避け、成功するPRDを生み出す6つのステージをご紹介します。

ステージ1:出発点(方向性のすり合わせ)

何が起きている?:リーダーとチームが探索する価値のある課題を見つける段階。
PRDの状態:箇条書き、仮説、初期データなど、PRDらしからぬ状態。
重要な問い:「これは本当に時間をかけるべきことか?」
よくある失敗:検証不足のままソリューションに飛びつくこと。

ステージ2:ディスカバリー(解決すべき正しい問題の特定)

何が起きている?:ユーザー調査やデータ分析を通じて、本当に重要な問題かどうかを検証。
PRDの状態:問題中心の1ページ資料:ユーザーの課題、市場規模、競合情報など。
重要な問い:「この問題は本当に解決する価値があるか?」
よくある失敗:「何も作っていない感」が怖くて検証を急ぐこと。

ステージ3:定義(問題の明確化とスコープ設定)

何が起きている?:制約、トレードオフ、対象外事項などを明確にする。
PRDの状態:問題定義、成功基準、やらないことの明文化。
重要な問い:「我々は何を解決するのか?何を解決しないのか?」
よくある失敗:スコープを絞らず、全部解決しようとする。

ステージ4:設計(解決策の検討)

何が起きている?:ブレスト、プロトタイピング、技術検証、ユーザーテスト。
PRDの状態:複数の解決策とそのトレードオフ。UXモックや技術評価。
重要な問い:「この問題を解く方法は? それぞれのメリット・デメリットは?」
よくある失敗:最初に思いついた解決策に固執する。

ステージ5:デリバリー(最終決定と実装開始)

何が起きている?:技術仕様やデザイン仕様の確定。指標や展開プランの整合。
PRDの状態:ユーザーストーリー、受け入れ基準、デザイン、成功指標の詳細。
重要な問い:「何を作るか、成功をどう測るか、みんなで理解しているか?」
よくある失敗:指標があいまいなまま開発を進める。

ステージ6:運用(リリース後の追跡と学び)

何が起きている?:利用状況や効果を計測し、次の改善へ活かす。
PRDの状態:学び、仮説との比較、次への示唆を反映した“生きている”ドキュメント。
重要な問い:「我々は何を学んだか?それは次にどう活かされるか?」
よくある失敗:リリースでPRDの役目は終了と思ってしまう。

2フェーズ構造:問題空間と解決空間

6つのステージの中には、見落とされがちな重大な“移行点”があります。それが「課題領域(What)」から「解決策領域(How)」へのシフトです。

フェーズ1:課題領域(「何を」定義する)

チームキックオフ:私たちはどの課題を探求しようとしているのか?なぜ今なのか?
計画レビュー:リーダーシップとの間で、課題のスコープと優先度について整合をとる
部門横断キックオフ:エンジニアリング、デザイン、データ、その他の関係者からインプットを得て、課題文を確定させる前に意見を集める

このフェーズの目的は、どうやって解決するかを考えることではなく、「正しい課題を解決しようとしているか」を確実にすることです。

フェーズ2:解決策領域(「どうやって」定義する)

ソリューションレビュー:ユーザー体験、技術的アプローチ、例外ケース、トレードオフについて整合をとる
ローンチ準備:実装の詳細、成功指標、展開計画を確定する
インパクトレビュー:結果を測定し、学びに基づいて改善を行う

これらのフェーズ間の移行は非常に重要です。
この境界が曖昧になっているチームは、重要でない課題に対して技術的には優れた解決策を作り上げてしまうことがよくあります。


優れたPRDが持つ特徴

15年にわたってPRDを作成・レビューしてきて気づいたのは、優れたPRDは単に意思決定を記録するだけではなく、チーム全体での共通理解を生み出すということです。

以下が、優れたPRDとそうでないPRDを分ける要素です:

「何を」より先に「なぜ」に答える
凡庸なPRDは、いきなり機能や仕様の話に飛びつきます。
優れたPRDは、まずユーザーの課題、市場の背景、ビジネス上の根拠から始めます。

トレードオフを明示する
すべてのプロダクトの意思決定には、何らかのトレードオフが伴います。
優れたPRDは、そのトレードオフを隠さず明示的に示し、あたかも存在しないかのように扱うことはありません。

学びに応じて進化する
静的なPRDは、書かれた瞬間に陳腐化してしまいます。
優れたPRDは、ユーザー理解、技術的制約、市場環境についての学びが深まる中で進化し続けます。

チームに「正しいものを作ろう」と思わせる
あるエンジニアがこう語ってくれました。
「今までで一番良かったPRDは、単に『何を作るか』を書いていただけじゃない。問題解決へのモチベーションを高めてくれた。なぜそれが重要なのか、僕たちの仕事が現実の人々にどう影響するのかを理解できたんだ。」

私が見てきたPRDの最大の失敗(そしてその回避法)

ミス①:PRDを「引き渡し用ドキュメント」として扱うこと
問題点:PRDを書いた後に姿を消し、他のメンバーがコラボレーションなしにそのまま実行することを期待してしまう
解決策:PRDを継続的な対話を促す「コラボレーションツール」として捉える

ミス②:課題領域を飛ばしてしまうこと
問題点:根本的な課題をきちんと検証せずに、いきなり解決策に飛びついてしまう
解決策:居心地が悪いくらい、時間をかけて課題発見と定義を行う

ミス③:早すぎる段階でPRDを詳細にしすぎること
問題点:課題や解決方法を十分に理解していない段階で、すべての細部を決めようとする
解決策:プロセスの進行段階に応じて、適切な粒度の詳細に留める

ミス④:リリース後を忘れてしまうこと
問題点:機能をリリースした時点でPRDを「完了」と見なしてしまう
解決策:最初から計測・学習・改善の計画を立てておく

すべてを変えるPRDの哲学

これまでに何百本ものPRDを書いてきてわかったことがあります。
重要なのはドキュメントそのものではなく、それを書く過程での思考なのです。

優れたPRDは、課題、解決策、トレードオフ、成功指標について明確に考えることを強制します。
それによって、チーム全体での共通の思考モデルが生まれます。
また、前提を明示することで、より良い意思決定を促します。

PRDは、単なる情報共有の手段ではなく、思考のためのツールなのです。

ある経験豊富なプロダクトリーダーはこう語りました:
「優れたPRDプロセスを持つチームはすぐにわかる。彼らは無駄なスタートを減らし、部門間の連携もスムーズで、実際にユーザーの課題を解決するプロダクトをきちんとリリースする。」

あなたへの問いかけ

今のPRDプロセスを見直してみましょう。

  • 解決策に飛びつく前に、十分に「問題空間」に滞在していますか?
  • PRDは進化していますか? それとも書いて終わりになっていますか?
  • PRDはチームを動かす力を持っていますか?

次に作るPRDでは、以下を確認しましょう:

  • 今、自分たちは6つのステージのどこにいるのか?
  • 正しい問題を本当に解決しようとしているのか?
  • 成功をどう測定するのか?

最後に

プロダクトマネジメントを15年間やってきて、価値のない課題に対して、完璧に実行されたソリューションを作るのに何ヶ月も費やしてしまったチームをたくさん見てきました。
一方で、シンプルな機能であっても、実際に検証された本質的な課題を解決したことで、莫大な価値を生み出したチームも見てきました。

違いは、実行力の高さではありません。
違いは、PRDに込められた「思考の質」だったのです。

優れたPRDは、チームに「何を作るべきか」を伝えるだけではありません。
それがなぜ重要なのか、どこでトレードオフを取るのか、成功とは何かを理解させてくれます。
理解が深まるにつれて、PRDも進化していきます。
そして、チーム全体での共通認識と整合性を生み出します。

何よりも大切なのは、あなたたちの努力のすべてが、本当に届けたい相手にとって意味あるものになる可能性を高めてくれるということです。

今、あなたが取り組んでいるPRDの中で、「解決策に急ぐ前に、もっと課題領域に時間をかけたほうがいい」ものはありませんか?