「エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する5つの原則」を読んだ



理論まとめ

エフェクチュエーションは、起業における不確実性に対処するための思考様式を説明する理論。熟達した起業家は、予測不可能な未来に対して、予測ではなく「コントロール」を重視する意思決定を行う。
これは、リスクを最小化しながら現状の資源を活用し、パートナーシップや偶然の出来事を積極的に取り入れ、新たな機会を創出するプロセス。

エフェクチュエーションには以下の5つの原則がある:

1. 手中の鳥の原則(Bird-in-hand)

起業家は、最初から明確な目的や市場機会が見えなくても、すでに持っている「手持ちの手段」を基に「何ができるか」を考え、行動を開始する。

2. 許容可能な損失の原則(Affordable Loss)

起業家は、期待される利益ではなく、失敗した場合に許容できる損失の範囲で行動する。

3. クレイジーキルトの原則(Crazy Quilt)

多様なパートナーシップを通じて、各パートナーが提供する資源や目的を取り入れ、協力しながら事業を拡大していく。

4.レモネードの原則(Lemonade)

偶然の出来事や予期しない事態をポジティブに捉え、それを新しい機会として活用することを指す。

5. 飛行機のパイロットの原則(Pilot-in-the-plane)

起業家は、自分がコントロールできることに焦点を当て、予測ではなく行動を通じて望ましい結果を生み出そうとする。

これらの原則に基づいて、エフェクチュエーションは未来を予測することなく、自らの行動と手持ちの資源に基づいてコントロールしながら新たな市場を創造するプロセスを強調している。
この思考法は、従来の「計画重視」のコーゼーション(因果論)的なアプローチとは対照的である。



それでは新規事業やプロダクト開発で、どのように実践できるか?

1. 手中の鳥の原則:自分の資源を見直す

アクション:自分がすでに持っているリソース(スキル、知識、ネットワーク、時間など)を棚卸しする。
例:自分ができること、知っていること、そして誰と繋がっているかをリストアップし、それを基に「今、何ができるか」を考え始める。

2. 許容可能な損失の原則:リスクを最小化する

アクション:事業を進める上で、どれだけのリソースを失っても許容できるかを検討する。
例:リスクを最小限に抑えるため、小規模な実験的なプロジェクトを立ち上げる。たとえば、少ない予算でプロトタイプを作成し、フィードバックを集める。

3. クレイジーキルトの原則:パートナーを巻き込む

アクション:信頼できるパートナーや協力者を見つけ、協力体制を構築する。ここで重要なのは、誰がどのようなリソースを提供できるかを柔軟に捉える。
例:アイデアやリソースを提供してくれる人を巻き込み、小さなプロジェクトや実験を通じて協力関係を築く。パートナーの意見を取り入れながら、アイデアを進化させる。

4. レモネードの原則:偶然を活用する

アクション:予想外の出来事や偶然のチャンスを前向きに活用する準備をする。
例:たとえば、途中で問題や想定外の状況が発生しても、それを新しい方向性を探るチャンスと捉え、次のステップに進む。アイデアが大きく変わっても柔軟に対応する。

5. 飛行機のパイロットの原則:自分の行動をコントロールする

アクション:未来を予測するのではなく、自分がコントロールできる現在の行動に集中する。
例:特定の顧客層や既存のネットワークに働きかけることで、まず最初の顧客を見つけたり、具体的な行動を一つずつ積み上げていく。


以下は5つの法則ではないが、本書に掲載されているアプローチ

6. 少ないリソースでスタートする

アクション:新たな事業やプロダクトを大々的に開始する前に、少ないリソースを使って小さな実験を繰り返す。
例:たとえば、最初は身近なターゲット市場に絞り、ミニマムバイアブルプロダクト(MVP)をテストマーケットに投入し、フィードバックを得る。

7. アイデアを柔軟に再定義する

アクション:新しい情報やフィードバックに基づいて、事業の方向性やビジョンを柔軟に調整する。
例:パートナーや顧客からのフィードバックをもとに、サービスやプロダクトの特性を変える。例えば、当初は特定のニーズに焦点を当てていたが、新たに見つけた市場機会に応じて方針を変更する。

8. パートナーシップを育む

アクション:自発的なパートナーシップを築き、互いの目的やリソースを共有しながら、事業を拡大していく。
例:協力者とのネットワークを拡大し、その人たちのリソースや知識を活用しつつ、新しいアイデアや市場を模索する。

本書はエフェクチュエーションの入門書に近い位置付けであり、もっと知りたい場合はこちらが参考になる。