情報発信のススメ:ブログを書いていたらForbesで連載することになったエンジニアの話



この記事はRecruit Engineers Advent Calendar 2017の15日目の記事です。

一言にすると「情報発信のススメ、人生は connecting the dots. 」です。

12月になるとアドベントカレンダーで記事を書く人は多いですが、もっと日常的にアウトプットすることのススメです。

私はいま、Forbes のオフィシャルコラムニストとして「エストニアの電子政府」 について連載をしています。何を隠そう、連載に至るきっかけがブログでの情報発信でした。

forbesjapan.com


コードの話はしません。特定の技術要素の紹介は他の方に委ねます。
先週こんなサービスを作ってしまったので、これをアドベントカレンダーの記事にしようかと悩みましたが、真面目に書くことにします。
新元号までの平成カウントダウンページを作ってみた(S3 + CloudFront + Route53 + ACM:SSL対応) - BppLOG

この記事を通して、エンジニアとしてこんな考え方もあるよ、とお伝えできれば幸いです。エンジニアだからこその情報発信メリットについても私なりの考えを書いていきます。

 

連載にいたるまで

Forbesでの連載に至った流れはざっくり以下の通りです。

  1. エストニアの滞在レポートをブログに書く
  2. ブログを見た方からイベント登壇オファーをいただく
  3. イベントに参加してくださっていた編集部の方から連載のオファーをいただく

当時、リクルートグループのR&Dチーム(ATL : Advanced Technology Lab )に所属しており、次世代のWEB技術についてのリサーチに従事していました。
リクルートの社員でありながら、HIGH MOBILITY というエストニアのスタートアップのベルリンオフィスにて半年ほどエンジニアとしてジョインし、WebBluetoothAPIを利用したOSSの開発を進めていました。会社のHQはエストニアの首都タリンにあったので、エストニアには出張やテックカンファレンス参加のために足を運ぶ機会があり、滞在レポートをブログに書きました。

この記事書いてから一年が経過しようとしたある日、記事を見た株式会社アドライトの木村さんから、「今度エストニアのイベントを開催するから登壇してほしい」とオファーをいただき登壇させていただきました。

journal.addlight.co.jp

www.slideshare.net

そして、このイベントに参加してくださっていた編集部の方から寄稿のオファーをいただくに至りました。

イベントや連載のオファーを頂いた時は、心からあの時ブログを書いていて良かったと感じました。ブログを書いた時には予想だにしていなかった展開です。

点と点が繋がった瞬間でした。
まさにスティーブ・ジョブズの「Connecting the dots」な瞬間です。

Connecting the dots

私の行動指針も「Connecting the dots」です。学生の頃からこのようなスタンスでしたが、スタンフォード大学卒業式でのスピーチを初めて聞いたとき、言語化するとまさにこれだ、と衝撃を受けたことを覚えています。ジョブス氏はスピーチの中でこう言いました。

将来を見据えて、点(出来事)と点(出来事)を結びつけることはできません。後で振り返って見たときにしか、点と点を結びつけることはできないのです。
だから、あなたが方は、とにかく点と点が将来、結びつくことを信じなくてはなりません。

このような考え方はプランド・ハプンスタンス理論とも言えるなと思っています。

アメリカのスタンフォード大学の教授、ジョン・D・クルンボルツらが提唱した理論。計画された偶然理論とも呼ばれる。「偶然の出来事は人のキャリアに大きな影響を及ぼし、かつ望ましいものである」とし、予期せぬ出来事をキャリアの機会ととらえることができるとき、その出来事を「プランド・ハプンスタンス」と呼ぶとした。
プランド・ハプンスタンス理論 | 産業能率大学 総合研究所

点と点をつなげるために私が大切にしていることが3つあります。

  1. 点がないことには何も始まらない
  2. 点は勝手につながることはなく、常につなげようとしなければならない。
  3. そのために点を打ち続けるしかない

点は勝手に繋がることはない

ジョブス氏の「Connecting the dots」なエピソードとしてよく取り上げられる内容に「大学の Calligraphy の授業で文字を美しく見せることを知り、それがのちのMacintoshの開発に役立った」という話があります。単にカリグラフィーを学んでいたからイノベーションが起きたわけではない、と私は考えています。

彼は「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」を非常に強く意識していました。その交差点にこそイノベーションが存在し、自分自身が目指すべき場所だと意識していたのです。前述のエピソードではフォントがリベラルアーツであり、コンピュータがテクノロジーであることは言うまでもないでしょう。彼は点と点を繋げることを強く意識していたのです。だから、「とりあえず好きなことをやっておけば、後から自然と点が繋がっていく」というわけではないのです。

無論、この考え方は欧米特有のものではなく、日本でも古来から説かれているのです。江戸時代に徳川家の剣術指南役であった柳生家の家訓を紹介します。

小才は、縁に会いて縁に気づかず。
中才は、縁に気づいて縁を生かさず。
大才は、袖振りおうた縁をも生かす。

とても才能のある人間は、袖が触れるほどの些細なチャンスも逃さない。チャンスに敏感であるという意味です。これはまさに、「点を繋げよう」と強く意識することです。

ちょっと話が本題から逸れてきたので戻しますね。
「なぜ情報発信がよいのか」ということです。

一言に「点を繋げる 」と言うのは簡単ですが、「いつか繋がる」と信じ抜くことは難しいです。その感覚はすごくわかります。私も最初はそうでした。今すぐには役に立たないことに取り組み、それが無駄に終わってしまうのではと思うのは当たり前の感覚です。そもそもブログなんかを書くぐらいならコードを書きたい、と思うエンジニアの方がむしろ多いでしょう。

だけど、点と点を繋げる小さな成功体験として情報発信は非常に効果があります。
それは別にブログである必要はなく、社内SNSやQiitaやTwitterでも何でもいいです。

情報発信をして得られること

ブログを1年半継続してみて、以下の3点が情報発信のメリットだと考えています。

  1. 自分の考えが深まる/整理される
  2. 他人からのフィードバックが得られる
  3. 自己表現の場になる

自分の考えが深まる/整理される

私は、ブログと Forbes 以外に、以前はITmediaさんのMONOistにて連載をしていました。

ブログはもちろんですが、特にメディアにて記事を書く場合、伝えたいことは何か、情報の裏付けがとれているのか、入念にチェックする必要があります。その過程で、他の情報源を調べたり、人と意見交換したりすることで、自分自身の知識や意見が整理され、深い理解にも繋がっていきます。

学ぶということは、インプットした内容を自分の中で咀嚼し、理解したことをアプトプットすることで自分自身の知識として蓄積していくことです。「教わる側より教える側の方が勉強になる。」とよく言われるのと同じことです。

意図的にアウトプットを増やすことが大切です。記事を書いていると、いかに自分がわかったつもりになっていたかをよく痛感します。

他人からのフィードバックが得られる

記事を公開したりツイートすると、その内容に対してコメントやリプライを頂くことがあります。もちろん指摘されてしまうこともあるのですが、結果としてそれは自分自身の正しい理解に繋がるので有り難い限りです。

また、情報は発信している人のところに集まります。そのため、情報発信を続けているとフィードバックの良い循環が生まれてきます。最近ではエストニア大使館の公式ツイッターアカウントで Forbesの記事を紹介していただけたこともありました。

正直、どんなフィードバックが返ってくるか、出してみないとわからないですし、突っ込まれて炎上したらどうしようという不安は常にあります。でもそれ以上に、読んでくださった人に何らかの価値を提供できたという経験は嬉しいですし、社内はもちろん、社外からもフィードバックがもらえるのは嬉しいです。

社内だとどうしても考え方が偏りがちです。個人的には社内で評価されるよりも、市場で評価されるべきだと思っているので、客観的な視点を持つためにも外からの意見をいただけるのは非常にありがたいです。

あとは、何か実装で詰まった時にググっていたら自分の記事に巡り合って、過去の自分に助けられる、なんてことも珍しくないです。改めて自分が過去に書いた内容を読み返すと、自内容にミスを見つけたり、その時は気付いていなかったことに気づけたりもします。

自己表現の場になる

おそらくブログを書いている人は、その内容を書きたいから書いていることが多いでしょう。なので、ある程度の記事が蓄積されると、ブログを見るとその人の興味/関心が見えてきます。特定の技術を深掘りする人もいれば、新しい技術の検証をしている人もいます。

エンジニアにとって、非エンジニアの方とのコミュニケーション手段としてのブログは有効だと感じています。エンジニアの人が非エンジニアの人に、自分の関心や志向など、より正確に伝えるための手段に向いています。ありきたりな履歴書より、自分自身を伝える手段として効果的です。

最近ではブログを見てリクルーティングの連絡も頂く機会も増えてきました。転職する時には面接だけで評価することは難しいので、事前に目を通してもらうことが出来れば、自分の考えや人となりを伝えることに役立つでしょう。

ブログに何を書くかは、何でもいいのです。

今まで使ったことのない言語で試しに「Hello, World!」してみた、でも何ら問題はないのです。Web技術に関する情報は、日々大量に発信されています。その中で単にツールの使い方や誰でも書けてしまうような入門レベルの内容もたくさんありますし、私もそのようなことを書くこともあります。とにかく継続して発信することが大切なので、それ自体は悪いことではありません。

そんな中で、最近私が大切にしていることが一つあります。
記事を書くにあたり、なぜそのトピックを選んだのか、どう役に立つのか、など自分なりの考えや意見を加えることを意識しています。単なるハウツー記事だと、知識はいずれ陳腐化していきますが、思考/思想であれば息が長いものとなるでしょう。

※ もちろん、個人のブログで書く場合は、内部情報など書いてしまわないように気をつけましょう。

始める理由はなんでもいい

今でこそこんなことを書いていますが、ブログを始めた時は何も考えていませんでした。
ブログを始めたのは1年半ほど前の 2016年4月。
始めた理由は、お小遣いを稼ぎたい、という極めて単純明快なものでした。アウトプットすることで自分のためになるなら一石二鳥では?!と始めてみました。1年半ほど経過して、自分のためにはなっていますが、お小遣いは全く稼げていません。笑
正直、稼ぐことを目的にするなら今の時代はアプリを作ったほうが広告で稼げるでしょう。

ブログを始めてもすぐに結果が出るものではないと割り切っていたので、とりあえず1年ぐらいは続けてみよう、と書きたいことを思うままに書くことで継続させてきました。
その結果、お金ではない別のものをたくさん得ることが出来ました。

最後に紹介したいブログのエピソードがあります。私の高校時代から今でも仲良くしている友人がいます。彼も、私とほぼ同じタイミングに、お小遣いを稼ぎたいという同じ理由でブログを始めました。彼はサラリーマンですが、映画がとても好きなので、映画に関する記事を1年ほどコツコツと書いていたら、映画雑誌から寄稿のオファーが来て出版にまで至りました。
creppy.hatenablog.com


まさに「connecting the dots」
継続は力なり、です。

ブログを書き続けていると、予想だにしていなかったことが起きます。
それが点と点が繋がる瞬間であり、一度でも成功体験を得ることができると、継続しやすくもなってきます。

2018年、ぜひ情報発信をしてみてはいかがでしょうか。


理科系の作文技術 (中公新書 (624))

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ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1

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